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意識ははっきりしているのに何も考えられない。けれど、それは逆に言えば何も考えずに済むのと同じで、そう思うとまるで心が軽くなったような気持ちになる。
「もっと体の力を抜いて、リラックスして……。ここでは思ったことを素直に言葉にしないとダメですよ」
眠くはないのに瞼が重くて、勝手に目が潤む。揺れる視界で先生を見上げると、観察するように俺を見る双眸と目が合った。
「どう?今、どんな気分?」
見つめられながらおずおずと口を開く。
「っき、きもち、いい、です……」
「……そう。気持ちいいんだ」
「ひっ、あ!」
肩を撫でていた手が首筋に触れてびくんと全身が跳ねた。身構えて再び体を固くするも、どうやら脈を測っているらしいことに気付いて、過敏に反応してしまった自分に恥ずかしくなる。
「もう一度言ってごらん。どんな気分?」
「あっ、き……っ、きもちいい、です……」
「これからもっと気持ちよくなるよ」
「も、もっと……?」
「うん。だからこのまま身を委ねて……。質問に答えてね」
「は、い……」
指先が離れていくのを目で追うと、先生は微かに笑みを深くした。
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