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肌ががざわざわと騒めいて、触れられる手に過敏に反応してしまう。
「汗をかいてるね……その服だと暑いでしょう。脱いでみようか」
「だ、だめです、だめ……」
「どうして?」
「だ、だって……」
「見せられないものでもあるのかな」
服の下には柊二さんがつけてくれた大量のキスマークが隠されている。いかにも情事を匂わせるその跡を他人には見せられない。ふるふると首を横に振ると、先生はじっと俺を見下ろした。
「遥人くんは、プレイは好き?」
「え……?」
唐突な質問に戸惑った声が出た。
「わ、わかりません……」
柊二さんに命令されるたび、触れられるたび、見つめられるたびに感じる甘美な陶酔。昔はそれを幸福だと感じていたけれど、果たして今はどうだろうか。プレイ後に訪れる現実と別離に苦しんでいることの方が多いような気がする。
この間だって、結局柊二さんは帰り際にあの指輪を拾い、薬指に嵌めて帰って行った。
「本来、プレイは満たされた幸せな気持ちになるものなんだよ」
先生の言葉に、形容できない感情が満ち潮のように広がっていく。
そんなときも確かにあったのだ。柊二さんに会えるだけで嬉しくて、触れられるとどきどきして、もっと深いところまで触って欲しくなって。別れの後もずっと多幸感が続いて、次に会う日が待ち遠しくてたまらなかった。まだ何も知らなかった、ただ柊二さんだけを信じていた、あの頃は。
「遥人くんの初体験はいつ?」
「え……」
「初めてプレイしたのは何歳の時かな。正直に答えて」
「じゅ……14歳のとき、です」
「意外と早いんだね」
先生の言葉にどきりとする。
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