#5 秘密

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「Subの自分が嫌?」  こくん、と頷くと、先生はごくごく優しい声音で「そう思うようになったきっかけがあるのかな?」とたずねた。うまく声が出せない。震える唇をどうにか動かす。 「中学のとき……」  友達の家に誘われて、数人であるDVDを見た。それは友達の兄が購入したもので、一枚380円だかそこらの旧作のアダルトビデオだった。 「どんな内容だったのかな?」 「Subが拘束されて、最初は嫌がってたけど、命令されたらすぐ言いなりになって……」 「それで?」  そこで見たアダルトビデオは、Domの男が命令を使い、隣の部屋に住んでいるSubと性行為に及ぶという内容だった。命令されたSubは言われるがままDomのものを舐めしゃぶり、Domが望むいやらしい言葉を並べ立て、自分の体を差し出していた。 「どんなことしてどんなこと言ってたのかな」  耳元で囁かれて、耳朶が震える感覚に体が跳ねる。白く霞みがかった頭の中に先生の声が侵入して、促されるまま当時耳にした台詞を口にする。 「あ、脚を大きく開いて……、っ……ご、『ご主人様専用おまんこ使ってください』……って……。そしたら、ゆっくり、中に」  避妊具を纏わず生のまま、見ている方がもどかしくなるほどゆっくりと埋まっていくDomのもの。挿入をわからせるようなじっくりとした抜き差しと、それに合わせて上がる媚びるような嬌声。次第にDomの態度は横暴で粗野になり、スローピストンがハードピストンに変わる頃にはスパンキングも加わって、言葉と暴力両方でSubの心身を追い詰めていた。 「それを見て遥人くんはどう思った?」 「こ、こわいって、おもった……」  知らない相手に命令されて、とろとろと蕩けていく瞳が怖いと思った。暴力を振るわれているのに、浅ましく全身を紅潮させ、舌をはみ出させて喘ぐ発情期の犬のような有様が恐ろしかった。  でも、一番怖かったのは。
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