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はじまり
対馬の沖に、二つの浮島がある。
東にある浮島を東島、西にある浮島を西島、と呼ぶ。
対馬の沖をしばし北上すると、激しい潮の流れに出逢う。
潮は、西は東に、東は西に、大海原を真っ二つに分け、巨大な渦を巻き、容赦なく流れる。
渦に巻かれ、東島は西に、西島は東に向け、回遊を繰りかえす。
やがて新月が巡りくる日、対馬の沖で、二島は、目と鼻の先で向かい合う。双方に三日の間、市がたち、たがいをつなぐ渡しが、にぎわう。ひとは、これを、三日の市、三日の渡し、と呼んだ。
太古のむかしから、対馬の民、東島の民、西島の民は、和を尊び、交易を盛んにし、世の平安を求め、繋がりを大切にしてきた。
しかし、ときとして、それが叶わぬときがある。
あるとき、それが、西島の杜から、始まった…・
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