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「いや」
二頭目が反発した。
「そうとは、かぎらないぞ、現に」
一頭目が、加わった。
「そうだ、現に、おまえは術にはまった、だが、おれたちは、まだ、落ちてない、正気だぞ」
そうか…ガオはほくそ笑んだ。連中には、妖術にはまるヤツと、そうでないヤツがいるとみえる。
「なら、訊くが」
三頭目は、まだ、あきらめていなかった。
「おまえたち、なんで、自分が正気だと、わかるんだ?」
「わかるんだ、なあ」
「ああ、わかるんだよ」
一頭目と二頭目が、結託した。
「おれたちには、見えるんだよ、あの石が」
「あの石? なんだ、それは?」
「硬い、硬い、木の実を割ったときの、あの石、だよ」
「そうだ、いつだったか、腹が減って死にそうだったときに、木の実をみつけたんだよ」
「それが、ものすごく硬くて、いくら割ろうとしても、割れなかったんだよ」
「それでも、無我夢中で、割ろうとしてたら、そこに石があったんだ、見るからに、重そうな塊、だった」
「だから、それをぶつければ、硬い殻は割れる、と直感して」
「木の実を、岩の上に置いて、おもいきり打ちつけたんだ、そしたら」
「そしたら、割れたんだ、あんなに硬かった木の実が」
「そのときの石が、いつでも困ったときに、フーと、見えてくるんだよ、頭のなかに」
「そうだ、見えてくるんだよ、ここんとこにね…」
いいながら二頭して、頭の真上を指で突っついた。
「おまえたち、バカか、石で木の実を割っただって、おかしいよ、おまえたちこそ、物の怪に、だまされてんじゃないのか?」
「バカいうんじゃ、ないよ、騙されてるのは、おまえの方だ、あの石の塊、おまえには、見えんのか?」
「そうだ、おまえこそ、妖術で、見えるもんも、見えなくされちまったんじゃ、ないのか!」
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