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ギシギシと床が軋み、不快な音をたてる階段を昇って、俺達は2階へ辿り着いた。
残念ながら、外観だけでなく内観も古い。
レリア局長はおもむろにワンピースの袖から杖を取りだし、壁に飾られた花の絵画の前で、弧を描くように一振。
すると、すぐ側の何もなかった壁がみるみる扉の形に変形し、カチッと心地よい音がした後、開いた。
おぉ、すごい。秘密基地みたいだ。
後ろを振り返ると、昇ってきた階段もいつの間にか消えていた。
「驚いた?これはねぇ、曜日によってかざす絵の場所が変わるのよ。後でクロードくんの杖も登録してあげるわね!」
驚いた様子の俺を見て、局長は何だか嬉しそうだ。
この世界じゃこんなギミックの隠し扉なんて特に驚くようなことではない。
むしろ、当たり前だ。
ただ、その扉の存在が改めて重要な機関に勤めることになったんだということをよりいっそう認識させた。
そんなことを考えているうちに、俺は職場のフロアへと足を踏み入れていた。
沢山の机がいくつかの群になって、並んでいる。
「さぁ、皆注目して!こちらが新しい仲間の、クロードくんよ」
張りのある一声で、デスクで作業をしていた30人ほどの一斉に振り返り、視線が集まる。
うわ、嫌だ。緊張する。
「本日からお世話になります、クロードと申します。よろしくお願いします」
レリア局長から自己紹介をふられ、俺は定型文のつまらない挨拶を披露する。
まぁ別に、一発かましてやろうみたいな気持ちは最初からなかったけど。
それでも俺を迎え入れてくれる空気は温かいようで、盛大な拍手を浴び、そっと胸を撫で下ろす。
とりあえず、なんとかやっていけそうな兆しが感じられた。
「皆、優しくしてあげてね。それじゃあ、クロードくん。貴方の所属するチームを紹介するわ。こっちよ」
デスクと椅子の島の間を通り抜け、俺は最後列、窓側の一角へと案内される。
そこには4つのデスクがあり、既に3人が座っていた。
内訳は男が2人、女が1人。
男の中には、さっき出迎えてもらったあの煌びやかなイケメンもいる。
ここが俺のチームか。なるほど。
「さあ、こちらがクロードくんの所属するチームよ。まずは……そうね。1人づつ、自己紹介をお願いしようかしら」
レリア局長にそう言われ、例の彼がすっと立ち上がった。
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