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――いち花さあ、チカとたまに会って、様子見てくれない?
この子、放っておいたら……ちょっと危ない気がする。
いち花にこんなこと頼むのもおかしな話だけど。
ママの幼なじみであるあっちゃんは、うちのアパートで号泣するチカくんを見て耳打ちした。
チカくんをうちに連れてきたのも、ママの訃報をチカくんに伝えたのもあっちゃんだった。
いいよ、とあたしは即答した。
安請け合いといえば安請け合いだし、たしかにこの人やばそうだな、と思ったのも事実だった。
見ず知らずの人とはいえ、ママの死がきっかけで命を落とされては目覚めが悪い。
ファミレスで、あたしと同じパフェを頼んだチカくん。
青白い顔の前に置かれたトロピカルフルーツたっぷりのパフェは、まるで下手な合成写真のように浮いていた。
パフェ、似合わないね。
煙草とか吸ってる方がイメージに合うよ。
そう言うと、チカくんは「煙草は吸わない」と少しだけ笑った。
スプーンを握る手は骨も静脈も浮き出ていた。
大きいのに、頼りない手。
「……綴はさ」
「ん?」
あたしが死んだら泣いてくれる?
そう出かかったの直前で止めて、「パフェ、おいしかったよ。かき氷も食べちゃった」と無理やり言葉を繋げた。
綴がくしゃりと笑う。
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