42人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんで腹壊すくせに、つめたいもんばっか食べるの」
「だって夏だし。ところで、ここのエアコンはいつ直るの」
「もうとっくに直ってるけど」
「それなら、なんでつけないの」
「汗だくでするのが好きだから」
「はあ?」
「汗だくがいい」
変態。
ぼそっとつぶやくと、綴の左手があたしの腹をくすぐった。
綴を真似て「だめてよ」と訴えれば、左手はさらにあたしを構った。
日に焼けて少し軋む髪に、人差し指が潜り込む。
親指が唇のふくらみをなぞって、中指で耳朶を軽く弾かれた。
お返しにシルバーリングに抱かれた薬指に唇を這わすと、綴の眉は微かに切なく寄った。
素直でかわいい薬指。
「なにしてる人なんだっけ、その人」
「またチカくんの話? よくわかんない。文章を書く仕事、とか言われた」
「それってライターとか作家ってこと?」
「さあ? ペンネーム聞いたけど忘れちゃった」
「すごいじゃん。俺、自分には文才ないから、文章書いて飯食ってるなんてすごいと思うよ」
それはあたしも同感だった。だけど
最初のコメントを投稿しよう!