42人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんでママ、あの人とつき合ってたんだろう」
悪い人じゃない、と思う。
だけど、いまいちチカくんのよさがわからない。
泣いている姿のインパクトが強すぎたせいか、どうしても弱々しく頼りなく見えてしまう。
「つき合ってないって言われたんじゃなかった?」
「そうだけど」
それが腑に落ちない。
別に隠さなくていいのに。
そんなことで責めたり、拗ねたりなんてしない。そこまであたしは幼くない。
ママの出かける回数が増えたのは、なんとなく気づいてはいた。
ママから言い出すまでは待っているつもりだった。
まさか、相手がああいう人だとは。
「毎週会ってるような男女の間に、なにもないなんてあり得るかな。それにママ、あたしにいつか会わせるかもしれない人がいる、って言ってたし」
「それは意味深」
「でしょ? でも、なんであの人なんだろう。ママ、ああいう感じが好みだったのかな」
「あっちがうまいのかもしれない」
「ちょっと、やめてよ!」
オエエとえずいてみせると、綴の右手は灰皿で煙草を押し消して、あたしを構いはじめた。
最初のコメントを投稿しよう!