逆読み真澄さんのこだわり恋愛観

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★  図書委員をしている僕は放課後、いつも通り図書室へと向かった。  図書室は人の出入りがほとんどなく、落ち着いた雰囲気の中で読書ができる。仕事と言っても、本の貸し出しや返却、それに本棚の整理をするだけだ。他の図書委員はこの仕事を面倒くさがっているようで、だから全権は僕に委任されていた。  自分が自分らしくいられるこの空間を、僕は気に入っていた。  そんな空間に足を踏み入れたクラスメイトがひとり。真澄さんだった。  珍しいな、と思って様子を見ていると、真澄さんは小説コーナーに足を運んだ。入念に選び、一冊の本を取り出す。迷わず僕のいる貸出受付まで持ってきた。 「この本、借りていいかな」  上目遣いで僕の様子をうかがうように尋ねる。その視線は妙に意味ありげに思えた。 『NEO~この恋を抱きしめて~』  確かこれは、5巻まで続いて完結した恋愛長編小説だ。  真澄さんが手にしていたのは、その最終巻だった。 「5巻だけど、間違いないかな」  僕が尋ねると、真澄さんは「うん、5巻で間違いないの」と、やけに強調し、さらにこう付け加えた。「滝沢君の声聞いたの、すごく久しぶり」と。少しだけ楽しそうな顔で。  僕は恥ずかしくなってすぐに目をそらす。なぜなら真澄さんは僕が内気で無口なことを指摘したのだと思ったからだ。
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