逆読み真澄さんのこだわり恋愛観

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「私、恋愛って落ちた種みたいな小さなきっかけが芽を出して、だんだん育っていくものだって思っているの。光を浴びたり嵐にさらされたりしながら、ゆっくり、ゆっくりと成長して、ようやっと綺麗な花を咲かせるものじゃないかな、って。  告白された時って、やっぱり誰でもドキドキすると思うし、私だってそうだった。だけどそれって、目の前の相手じゃなくて、恋ができるっているシチュエーションにときめいているだけだと思う。  よく知らない相手の告白を受け入れちゃったら、付き合いながら相手の好きになれるところを探さなくちゃいけなくなる。物語のような恋の旅路を逆走しなくちゃならないんだ。  だから結末から遡る恋がどんなものか、知りたかったんだよ」  そうだったのか。真澄さんの恋愛観を聞いて、なぜ彼女が逆読みをしていたのかが理解できた。 「でも、自分に気持ちを向けてくれた人には答えてあげたいって思ったりもするの。だって、自分が想っている人と結ばれるかなんて、ぜんぜんわからないじゃない」  確かにそうだ。互いが意中の人だなんてドラマみたいな展開、現実ではそう起こりえないと思う。  目の前の真澄さんが、僕にとってはとてつもなく遠い人に思えるように。 「私、最後の1巻を読み終えたら結論を出そうと思うんだ」  少しだけ泣きそうな顔をして、彼女はそうこぼした。僕は心の波立ちを鎮めながら、真澄さんにそっと伝える。 「もしも付き合うことになったら、僕がいちばんに君のことを祝福するよ。逆読みだって、きっと楽しいと思う」  真澄さんは来週から、成宮と一緒に下校することになるだろう。図書室に来ることもなくなるし、僕と言葉を交わすことも。  それはきっと、この恋が終わることと同義なのだと、僕は覚悟した。
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