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月曜日の教室はやけに盛り上がっていた。ひとりの女子を中心にして、祝福とも悲鳴ともとれる騒ぎ声が飛び交う。
「青春時代は短いんだからね! チャンスがあったら一分一秒、無駄にはできないのよ!」
「なんでその場で答えを出さないのよ! あたしだったら即オーケーするって!」
「早くしないと別の相手に目移りしちゃうかもよ!」
話題の中心はクラスメイトの真澄朱里さん。盛り上がる友人たちとは対照的に、当の本人はうつむいてもじもじとしている。
皆はすでに事態を把握していたようで、遅刻ぎりぎりだった僕に友人が教えてくれた。
「あの成宮圭吾に告白されたらしいよ。けど、返事は保留にしたんだってさ」
成宮圭吾――別のクラスの男子で、お偉いさんのご子息様。本人は副生徒会長を務めており、生徒からの人望も厚い。背は高く見た目も悪くない上、遠慮のない笑顔とスペックの高さが評価を割り増しにしている。陰とか陽とかいう分類をすれば、彼は僕の正反対に違いなかった。
「今からでも遅くないよ! さっそく今日の放課後、返事しに行こうよ!」
「あっ、えっと、今日はやめておくよ。だって今週の土曜日にお返事しますって言っちゃったから」
「まったく、シンデレラガールになるの、迷う理由なんてないでしょ!」
真澄さんと僕は接点がなかったわけではないが、言葉を交わしたことはほとんどない。だからそんな会話は他人ごとだと思って聞き流していた。
ところがその日、思いがけないことが起きた。
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