作品名:背徳と快楽

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作品名:背徳と快楽

店の奥にある部屋の扉がゆっくりと開く。 間接照明しかない仄暗い部屋。 零に導かれるように男性はその部屋へと足を踏み入れた。 そして何も言わず、彼は羽織っていたジャケットを脱ぎ捨てる。 すっかり顔は高揚し、じっと零の瞳をただ見つめている。 「そう。キミは生まれ変わる。何もやましいことなどないんだ」 零はそう言って男性の元へ歩み寄り、無言のままYシャツのボタンを外して行く。 それだけで彼の身体は興奮し、震え始める。 彼の奥底から何かが芽生え、弾けようとしている証拠なのだろう。 Yシャツを脱ぎ去ると、彼の肉付きのよい裸体が現れる。 零は何も言わず、そのまま両胸の突起に触れ、優しく弄ぶ。 部屋に響く、男性の嬌声。 徐々にスーツのズボンに浮かび上がる欲望の塊の膨らみ。 それと同時に、彼は目に涙を浮かべ始めた。 零は何故、そのような感情を抱くのか手に取る様に分かる。 彼の脳裏には愛する彼女の姿があるのだろう。 だが、今の自分はどうだ。 知らない男に胸を攻められ、挙句の果てに自らの局部を起立させている。 その背徳感に苛まれているのだ。 それでも零は彼に刺激を与える事を止めない。 これは彼の救済でもあり、気高き作品に昇華させるための崇高な行為なのだから。 零は男性の顎を掴み、強制的に視線を合わせる。 「言っただろ? キミは何も悪くない。本能のまま、性を貪れば良いんだ」 その言葉を聞いた男性の目が、一瞬大きく開く。 何かを悟ったように、自らスーツのズボンを脱いで行った。 下着姿となった彼は、呼吸を荒げながら、ただ零の動向を待つ。 「それでいい」 そのまま零は、彼を部屋の真ん中に用意しておいた、大きなテーブルの上に寝かせた。 男性は何も言わずそれに従う。 両足はダラリと机から垂れ下がり、下腹部の膨らみが天を向いて強調される卑猥な姿を取る。 両手を広げさせ、手首を縛る。 脇が露わになり、より羞恥心を誘う。 「その調子だ。何も考えず、ただ、快楽の波に身を委ねるだけで良い」 彼の耳元で囁く零の優しい言葉に、男性は静かに頷いて見せた。 零はそのまま彼の身体に冷たい粘液をかけていく。 全身隈なく、下着の上からも。 思わず男性は吐息を漏らす。 間接照明に、ぬるついた液体に染まった男性の裸体が怪しく輝いていた。 零は再び、男性の胸の突起に触れると、先程以上に彼の身体は跳ねた。 何度もそこを攻める度に、テーブルがガタガタと震えるくらい身を捩り始める。 「もっと声を出して良いんだよ。ココには誰も来ないし、外に漏れる事もない。キミの世界だ」 零はそう言って、男性の下着を剥ぎ取ると、張り詰めた陰部を優しく扱き始める。 「ああっ! ヤバい…」 味わった事のない快楽に、言葉にならない声を上げ始めた。 「まだ刺激が足りないのかな?」 零はニヤリと笑みを見せ、彼の胸の先端に厭らしい機械を取り付ける。 怪しげな機械音が轟くと共に、強烈な快感を彼に与え始める。 「ぐあああ!」 「いいね。その声。今、キミは美しい作品へ昇華しているんだよ」 そのまま零は陰部を弄ぶスピードを早める。 それに比例するように、男性は身体をブリッジするほどよがり始める。 零の手が動く度に厭らしい音が部屋にこだまする。 「う…あ、も、もう…」 囁くような声と共に、男性は身体を痙攣させながら、陰部から白い液体を放った。 零の手を汚し、床に飛び散る。 呼吸を荒げたまま、男性の顔はまだ満ち足りていないような表情を浮かべている。 その証拠に、まだ彼の陰部は熱を帯びたままだ。 「そうだよね。まだ、足りないよね?」 その言葉に、男性の口元がゆっくり緩む。 零は気障っぽく笑みを浮かべると男性を無理矢理起こし、少し乱暴にうつ伏せに倒した。 両手を縛られたまま尻を突き出し卑猥な格好をしている。 「本当にキミは素晴らしいね」 零は自らの指に、ねっとりとした液体を垂らす。 男性の放った液体と混ざり合い、厭らしい音を立てる。 「ねぇ。これ、欲しい?」 零はじっと彼の目を見つめながら、指を何度か広げたり閉じたりを繰り返す。 その時、男性の顔に彼の指を伝った粘液がポタリと落ちた。 「ほ…欲しい…です」 「フフッ。良く出来ました」 そのまま零はゆっくりと男性の下半身側へ移動すると、その指を双丘の奥へ向けた。 「う、あっ…」 経験した事のない刺激が男性の脳天を貫く。 最初は零の指の侵入を拒んでいたが、次第に彼を受け入れる様になっていく。 スラリと長い彼の指が男性の奥底を弄ぶ度に、身体は痙攣を始める。 「震えているけど、どうしたんだい?」 「も…」 「何? 聴こえないけど?」 「もっと…。もっと!」 「いいよ。だけど、もう泣いても、許されないからね」 零はそのまま、指の動きをより小刻みに早く動かすと、男性の身体はさらに震える。 陰部を扱かれ、零の指で身体の奥を突かれる度に、男性は啼いて全身のあらゆる箇所から滴を溢れさせた。 それから零の激しい攻めに、男性はなす術もなく射精させられた。 しかし零はその手を止める事はなかった。 「ああっ…ああっ!」 男性の叫びにも似た声が部屋にこだまする。 「ほら。どうしたの? もっと気持ち良くなりたいんでしょ?」 零の言葉に、男性は今まで以上に嬌声を発した。 そして、陰部からまるで間欠泉のように透明な液体をまき散らし始めたのだ。 男性の絶叫は、今の零にとっては心地よいクラシック音楽のように思えた。 最高の作品が作れる。 ただそれだけを考えていた。 それからどれくらいの時間が経ったかはわからない。 零はカゴいっぱいの花を持って部屋へ戻って来た。 その中心には、テーブルの上で上体を倒したまま、動かなくなった男性の姿があった。 床は男性が放ったあらゆる液体で満ちていた。 零はそのまま男性の背中やその周りを美しい花々で彩って行った。 「テーブルをどかした方が良いかと思ったけど、これはこれで良い構図だな」 色々と試行錯誤を繰り返しながら、零はカメラのファインダーを覗く。 両手を縛られたまま、何処か安堵した表情を浮かべている男性の姿はどこまでも卑猥で綺麗だった。 また、天井のカメラのアングルは、男性の凛々しく赤く上気した背中を映していた。 「うん。上出来。素敵な作品をありがとう」 そう言って、零は部屋の入口に置いてある大きな花瓶に視線を向ける。 そこには紫色の怪しく光る花達が生けられていた。 零は静かにそこに歩み寄ると、少し物憂げな表情で花達を愛でるのだった。 (今日もまた、僕は素敵な作品を作る事が出来たよ) そう、寂しそうに心の中で呟きながら。
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