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石像みたいに動かなくなった柊ちゃん。
それが私の苛立ちを加速させる。
「ハーグーわっ!」
一音一音強調するかのようにして叫べば、
「え……」
柊ちゃんが自分の身体を見下ろし、何かを確認しその視線を戻す。
「俺……、服着てないけど」
「そんなの見ればわかるよ!」
「あー、…………だよね」
「ハーグーわっ!」
柊ちゃんは瞬きするけど、それ以外は微動だにしない。
「え………、だってまずくない?」
「何が?!」
何がまずいのさっ
ますますイライラした。
「だから俺服着てないし」
「脱いだ柊ちゃんが悪いんでしょ?」
「え……だって、お風呂に入るつもりだったから」
「お風呂に入る前にハグすればよかったじゃん」
「………すず?」
「何さ」
「お前、どうかしたのか?」
「どうもしてない!」
「すず?」
「別になんでもない!」
「全然なんでもないって感じの返答に聞こえないけどねぇ」
少し呆れたような声で呟いた柊ちゃんは右側に少し首を傾けた。
酔っているせいか、いつもより仕草がゆったりしているように見えるし、声の速度も遅いような気がする。
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