1.繁華街の夜

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「俺が追い払った意味がないじゃん」 「そうだね」 「そうだねって……お前」 やっぱりすずが誘ったと言ったのは本当だったのか? 戸惑う俺に向かって、じゃぁねとすずはコンビニを出て行った。 おいおい待て待て 俺は慌てて飴を棚に戻して、すずを追いかけた。 そしてコンビニから数メートル先にいたすずを再び捕まえる。 「もう、何、柊ちゃん。すずになんか用なの?」 「用って、そんなんじゃないけど、男漁りに行くって言うのに、それを知ってて行かせられるわけがないだろ?」 「柊ちゃんに関係ないじゃん」 「……関係ないけど、関係なかったけど――、知ってしまった以上、見過ごすわけにはいかない」 「バカだね、柊ちゃん。私の事なんてほっとけばいいのに――」 「…………すず、お前なんでこんなことをしてる?」 「さっき、必要だからって言った」 「必要って?金か?」 「他に何が?」 「なんで金がいる?」 「言いたくない」 何か事情があるのだろうか……。 「…………あの親父はお前にいくら払うはずだったの?」 こんなこと聞きたくなかったけれど、 「5万」 援助交際の値段というものを初めて俺はリアルに耳にした。 ちょっとしたカルチャーショックだな。 「…………なら、ついてこい」 「は?どこに?」 「5万は俺が払う。それなら文句ないだろ?」 「柊ちゃん、私とやるつもり?」 思わず目をむいた。 俺の知ってるすずから出てくる言葉とは思いたくないな…… 「やらねーよ。飯、食いに行くぞ、飯。付き合え、それだけで5万なら文句ないだろうが」 「……ほんとバカだね。柊ちゃんって」 「……」 お前に言われたくないわ。 ここから近くのファミレスに向かって歩きだした俺。 すずは黙って後ろについてきて、とりあえずは繁華街に行くのはあきらめたようだ。
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