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「俺が追い払った意味がないじゃん」
「そうだね」
「そうだねって……お前」
やっぱりすずが誘ったと言ったのは本当だったのか?
戸惑う俺に向かって、じゃぁねとすずはコンビニを出て行った。
おいおい待て待て
俺は慌てて飴を棚に戻して、すずを追いかけた。
そしてコンビニから数メートル先にいたすずを再び捕まえる。
「もう、何、柊ちゃん。すずになんか用なの?」
「用って、そんなんじゃないけど、男漁りに行くって言うのに、それを知ってて行かせられるわけがないだろ?」
「柊ちゃんに関係ないじゃん」
「……関係ないけど、関係なかったけど――、知ってしまった以上、見過ごすわけにはいかない」
「バカだね、柊ちゃん。私の事なんてほっとけばいいのに――」
「…………すず、お前なんでこんなことをしてる?」
「さっき、必要だからって言った」
「必要って?金か?」
「他に何が?」
「なんで金がいる?」
「言いたくない」
何か事情があるのだろうか……。
「…………あの親父はお前にいくら払うはずだったの?」
こんなこと聞きたくなかったけれど、
「5万」
援助交際の値段というものを初めて俺はリアルに耳にした。
ちょっとしたカルチャーショックだな。
「…………なら、ついてこい」
「は?どこに?」
「5万は俺が払う。それなら文句ないだろ?」
「柊ちゃん、私とやるつもり?」
思わず目をむいた。
俺の知ってるすずから出てくる言葉とは思いたくないな……
「やらねーよ。飯、食いに行くぞ、飯。付き合え、それだけで5万なら文句ないだろうが」
「……ほんとバカだね。柊ちゃんって」
「……」
お前に言われたくないわ。
ここから近くのファミレスに向かって歩きだした俺。
すずは黙って後ろについてきて、とりあえずは繁華街に行くのはあきらめたようだ。
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