1.繁華街の夜

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無言でむしゃむしゃとハンバーグを咀嚼しながら、今俺の頭の中は猛スピードでいろんなことをフル回転。 「ごちそうさまでした」 すずが両手を合わせ美味しかったぁとニッコリ笑い、 あぁ、ようやく笑顔を見た気がする。 なんてぼんやりと思う。 「柊ちゃん、食べんの遅いね」 「あ」 話しかけられ顔を上げた。そして再び皿へ、 確かに無駄によく噛んでいたからか、すずの皿は綺麗なのに俺の皿にはまだハンバーグが残っていた。 「あー、うん。だな」 今度はぼんやりと残ったハンバーグを見つめれば 「スキあり!」 グサっとハンバーグにフォーク。 「はぁ?!」 そして、一瞬でパクりとすずの口の中に消えた。 はぁ?何やってんの?コイツ。 驚く俺に、 「うん、美味しい!こっちのハンバーグもめっちゃ美味しいね」 すずが親指をたて、グッとポーズ。 呆れたーー、 「おい、勝手に食うなよ、まだ食べるつもりだったのに」 食う気なくしたーーと、フォークおいて背もたれに脱力。 反対にすずは身を乗り出し俺に言う。 「柊ちゃん、世の中は弱肉強食だよ」 「……」 「うかうかしてると、何にも無くなっちゃうよ」 そしてニッコリと笑う。 「……」 何故だろう。 すずは笑っているのに、なんてことのない言葉なのにーー、 すずが言うと重たく聞こえた。
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