188人が本棚に入れています
本棚に追加
「デザートも食うか?」
そう声をかけたのは、別にすずに同情したからではない。
ただもう少し、もう少し一緒にいるべきだ、
もう少し話をするべきだ――、
そう思ったから言っただけだ。
「柊ちゃんのそれ、一口ちょうだいよ」
そう言って立ち上がり、無理矢理自分のスプ―ンを俺のアイスに突っ込もうとするすずは、楽しそうに笑っていた。
全く数時間前とは別人の顔をして――、
俺も久しぶりに笑った。
何て言うか、無防備な自分。
飾らない自分、疲れない自分、
うん、それだな、そんな気がする。
でも、どんなにそれが楽しく、笑いに満ちた時間だったとしても、終わりは必ずやってくる。
ずっとはここにいることはできない。
ここにはいられない。
すずだって、本来ならばもう家に帰らねばならない時間だ、
だが――、果たしてすずはこの店を出たら、真っすぐ家に帰るのだろうか?
疑問が残る。
そうなると俺もなかなか最後の言葉を口に出せないでいた。
最初のコメントを投稿しよう!