1.繁華街の夜

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「もう出よう」 そう言ったのは、すずの方だった。 俺はただ小さく頷き、伝票を手に取り支払いを済ます。 外に出ると先に店を出ていたすずが空を見上げ手を伸ばしていた。 「何やってんの?」 俺の言葉に振り返ったすずは、「綺麗なものに触りたくなったの」 と意味不明な発言。 「触れねぇだろうが」 真面目に返した俺に、 「ふふ、だよね。あんな綺麗なものに触れたら、自分が消えちゃいそうだよ」 「……」 ますます意味不明。でも笑い飛ばすこともできず、俺はなんて返していいかわからない。 あぁ、ふがいないな……。 俺は何も思いつかなかった。 「柊ちゃん、ご飯、ご馳走様ね」 「え?あ、あぁ……。そうだ、すず、これ――、」 無造作に二つに折りたたんだ万札5枚。 俺はポケットからすずに向かって差し出した。 すずはチラリと視線を落とし、すぐに顔をあげ首をふった。 「いらない」 「え?」 「もう、いいや。いらない。普通に楽しかったし、ご飯もご馳走になったからもういらない」 「え、でも、それじゃ困るだろう?」 「その話は柊ちゃんには関係ないから気にしないで」 それは今更無理な話だ。
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