1.繁華街の夜

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「お前……もしかして家に帰らず、またあそこの路地に戻るつもりなのか?」 嫌な予感がして、つい漏らしてしまった俺の本音。 すずは少し驚いた表情を一瞬見せ、そして今度は辛そうに顔を歪めた。 傷つけた――、そう思った時にはすでに遅し、 「あー、どうかな……。わかんないや」 逸らされた視線。 「すず……」 「でも今日は――、やめとこうかな」 「え……」 「うん。そうだな、帰ろうかな……。だってあそこに戻ったら、せっかくの楽しい気分が台無しになりそうだもん」 「本当に帰る?」 「うん」 「なら、送る」 「柊ちゃん、私の家知らないでしょ。昔の家とは違うよ。引っ越ししたからね」 「あ~、そうだっけ。そんなこともあったような……」 遠い過去の記憶。はっきりとは覚えてない。 「今はどこに住んでるんだ?」 「知ってどうするの?」 「どうもしないけど……、どこに引っ越したの?」 「どうもしないのに聞くなんて変なの……。今は前に住んでた場所の隣駅だよ」 「なら近いし送る」 「それはいいや」 「え?」 「一人で大丈夫だから」 線引きされた。そう思った。 何故思ったかはわからない。 すずは別に怒ってるわけでのなく、笑っているけれど、 でも、もう会わない、そう言われた気がした。 なんだか無性に腹が立った。 それは何に? 俺はまだその答えを持っていない。 けど、腹が立った。
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