1.繁華街の夜

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「ねぇ、なんかお腹すいたよぉ、どこか食べに行こう」 少し甘えた声で俺の腕に絡みついてくる女を見下ろし、俺はすばやく考える。 今日は昼まで寝てたし、睡眠満たされ、性欲も満たされ、次は食欲ってか? 「ねぇ、行こうよ」 少し鼻にかかったその声が妙にカンに触る……でもないが、まぁ、いいか。 実際、腹も減ったような気もするしな……。 女というよりは、現在時刻と相談し、俺は頭の中であれこれこの後の算段を練る。 食事してバイバイ、でまぁ、いっか。 次の約束は――、あー、なしだな。 どうも、この声が好きじゃねぇ。 でも今日はヨシとしよう。 俺はクズじゃねぇからな。(クズもろくでなしも同じか?) 誰に言い訳するでもなく、頭の中の独り言。 俺はニィッと口角をあげ、「いいよ」と女に笑って見せた。 「やったぁ」とはしゃいだその声に、ん?とまたも無意識に顔を顰めそうになったけれど――、後数時間、まぁいいか。 と、その気持ちに蓋をした。 部屋を出て、俺の腕に絡みつく綺麗に整えられた爪。 ある意味凶器だな……、何て変なことを考えながら廊下を歩く。 身体は細かったくせに、絡みつく腕は結構力が強い。 おいおい、子供じゃねぇんだから、1人でまっすぐ歩けよ。 と言いそうになるのを飲み込み、作り笑顔。 あ~ぁ、早く外に出て新鮮な空気を吸いてぇなぁ……。 無意識に速足になる。 「あ~ん、早いよ、待ってよぉ~」 鼻につく声。 う~ん、やっぱりこの声あんまり好きじゃねぇな。 何て思ってあと一歩でラブホの外へ――、のタイミングで
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