11. 変わりゆくもの

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「なんだ、まだ起きて待ってたのか?」 その日の夜、柊ちゃんは本当に珍しく帰宅が遅かった。もう間も無く日付も変わろうとしている時刻に、柊ちゃんはご機嫌のご様子だった。 柊ちゃんは私の横を通り過ぎ、お水を飲む。 空気が動いてお酒の匂いがする。 外で飲んでたんだ…、 仕事って言ってたのに。 仕事でお酒を飲むこともあるということは知ってはいたけど、高校生の私には理解はできない。 だからかもしれない、何故かチクリと胸が痛んだ。 そして、そのせいだろうか 「別に待ってたわけじゃないよ。テレビ見てたらこんな時間になっただけ」 なんともかわいげの無い言葉が私からこぼれ落ちていく。 「ふーん。そっか」 柊ちゃんは気にするでもなく、怒ったわけでもなく、ただ少し口元で笑った後、 「風呂いこーっと」と千鳥足で部屋を出ていった。 なんだか頭きた。 なんだか腹が立った。 なんだか、悔しかった。 なんだか、寂しくなった。 なんだか泣きたくなった。 なんだかーーーー、って何に? わからない、 わからない、わからない、わからない。 わからないからズカズカと歩いていって脱衣所の扉を声もかけずに一気に開いた。 「うわっ、とびっくりしたぁ、なんだよ?」 柊ちゃんは上半身裸だった。 目がチカチカした。 男の人の裸は見たことあるけど、柊ちゃんの裸は初めて見てしまった。 それもこんな至近距離で、 チカチカしてドキドキして、イライラもして 「約束のハグは?」 私は怒って叫んでた。 柊ちゃんはキョトンとしてた。 そりゃそうだ。 叫んだ私もびっくりしてるさ
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