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「おぉっと」
危うく出入り口で正面衝突しそうになった。
そこら辺ならまだしも、ラブホってところがなんか気まずい。
「あ、すんません」と俯き加減で謝る。
と必然的に相手方の足元が目に入るわけで、俺はちょっと驚いてしまった。
どう見てもどっかの高校の制服スカートに生足、そして白い少しルーズな感じの靴下。
へぇ~、これ、また流行ってんのか?
何て、どうでもいい事と同時に、制服でラブホかよ。すげぇな今時の女子高生は、何て思ってた。
そしたら、
「こちらこそ申し訳ない」
堅いセリフで耳に落ちてきた声色に思わず眉を顰める。
思いっきりオヤジの声じゃん。
マジかよ。女子高生の相手はオヤジかよ。
援交か?
どんな面してんのか興味がわいて、俺はわざと顔をあげた。
目に入ったのは髪の薄くなった眼鏡の小太り親父。
わ、最悪。
こんな奴とやんのか?
根性あるな、とついでに隣の女子高生の顔もチラ見しようとして、
「あ?お前、どこかで――、」
考えるよりも先に俺から零れ落ちた言葉。
サッと素早く俺から逸らされた視線。
顔を背けて俯き、俺の視線から逃れようとする。
この行動に俺よりも先に相手は俺が誰だかわかっているという事が窺えた。
誰だ?
見たことある。知ってる顔だ。
まともに見えたのは一瞬だったけど、知ってる――、絶対、知ってる。
俺の頭の中をものすごいスピードで記憶が走りまわり、突然閃いた。
そうだ、お前は――、
すっかり忘れていた俺の過去の記憶。
「お前……」
名前を思い出そうとして、一歩近づけば、
「ちょっとどいてくれないか」と援交親父。
急に腹が立った。
これからラブホにしけこもうとしてる親父をひと睨みし、
「コイツ、俺の知り合い。ちょっと顔かせ」
有無を言わせず、親父とそいつの腕をつかんでホテルの裏側へと回った。
あ、そうそう、俺の腕に先に絡みついていた腕は無意識に振り払っていたようだ。
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