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パシッと頬に走った痛み。
痛っ、
え?!はぁ?なんで?
俺ナンパ女に今殴られたんだけど?!
呆気にとられた俺に向かって、
「さいってぇ~、死ね!」
おまけにこっちからも死ね呼ばわり。
はぁぁぁぁ?
と思った瞬間には身を翻し立ち去る女。
そして隣からは、
「だっさ、超ダサ男じゃん」
ちょっと小ばかにしたようなセリフ。
もちろん吐いたのは女子高生。
そしていいのか悪いのか、このセリフがきっかけで俺の記憶が扉を開く。
ダサ男、ダサ男、ダサ男~。
それは女の子の変な替え歌の歌声で――、
そうだ、いつもそう言いながら、ケラケラと楽しそうに笑ってはしゃいでいた女の子がいた。
あれは――、そうだ、祭りだ。俺の地元に以前からある盛大な神輿の出るお祭りだった。俺も子供のころから祭りには必ず参加していて、中・高校生になった頃には、勝手に主要メンバーにもなった気でいた。
その頃、よく構ってやった小さな女の子がいた。
そいつだ。同じ顔をしてる。
そしてこの口癖。
俺を睨むように見上げるその瞳に、今は笑顔のかけらもないけれど、
誰だかわかった。
鈴の音のようによく笑っていた女の子、お前は――、
「すず、お前だよな?」
俺の言葉に黒い双眼が確かに揺れた。
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