1.繁華街の夜

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パシッと頬に走った痛み。 痛っ、 え?!はぁ?なんで? 俺ナンパ女に今殴られたんだけど?! 呆気にとられた俺に向かって、 「さいってぇ~、死ね!」 おまけにこっちからも死ね呼ばわり。 はぁぁぁぁ? と思った瞬間には身を翻し立ち去る女。 そして隣からは、 「だっさ、超ダサ()じゃん」 ちょっと小ばかにしたようなセリフ。 もちろん吐いたのは女子高生。 そしていいのか悪いのか、このセリフがきっかけで俺の記憶が扉を開く。 ダサ男、ダサ男、ダサ男~。 それは女の子の変な替え歌の歌声で――、 そうだ、いつもそう言いながら、ケラケラと楽しそうに笑ってはしゃいでいた女の子がいた。 あれは――、そうだ、祭りだ。俺の地元に以前からある盛大な神輿の出るお祭りだった。俺も子供のころから祭りには必ず参加していて、中・高校生になった頃には、勝手に主要メンバーにもなった気でいた。 その頃、よく構ってやった小さな女の子がいた。 そいつだ。同じ顔をしてる。 そしてこの口癖。 俺を睨むように見上げるその瞳に、今は笑顔のかけらもないけれど、 誰だかわかった。 鈴の音のようによく笑っていた女の子、お前は――、 「すず、お前だよな?」 俺の言葉に黒い双眼が確かに揺れた。
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