1.繁華街の夜

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無言の睨み合いが続くもーー、きゅっと結ばれている唇は一向に開く気配がない。 だから、 「すず、お前、俺が誰だかわかってるよな?」 俺はジッとその顔色をうかがう。 黙ったまま俺をジッと見上げてくるその黒い瞳。 見れば見るほど昔の面影が蘇ってくる。 そうだった、この瞳だ。 「お前、絶対すずだろ?」 少し苛立ちがまじり始めた俺の問いかけに「違いますよ」と答えたのは、後ろにいた援交親父だった。 「はぁぁ?」 なんだか腹が立ってガンくれながらそちらに視線を向ければ、またも眼鏡をずり上げながら 「すずちゃんではなく、彼女はリンちゃんです」だとさ。 「は?」 リンちゃん?リンちゃんだと? すず→鈴→リンリン→りんちゃん。 は、何だよそのアホみたいな図式は――、 呆れた視線をすずに戻せば、プイッと逸らされた視線。 絶対安易なこの図式どおりじゃんか――、
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