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蓋を開けてみれば何て単純。
でも、それは”天才”という要素が不可欠だった。
2人目の被害者の恋人があるものを提出したことで事件は一気に解決に向かう。
「2人目の被害者の恋人は以前から被害者の浮気を疑っており、ゴミ箱を確認していたりしたそうです。
その時、明らかに怪し気な破られた封筒と紙を見つけてそれを持ち帰ったそうです。」
南が捜査の報告をするのを聞きながら手元の資料の写真を見る。
細かく破られた紙をセロハンテープで元に戻して現れたのは楽譜。そして一通の手紙。
そこには「自分の未完の楽譜である。これを完成させたら貴方の作った曲として発表してもいい。但し、この手紙と封筒、楽譜は破って必ず誰の目にも届かないところに捨てること。」と書いてある。
「手元の資料を見ていただけると分かる通り、ホシはこのように楽譜と手紙を被害者たちに送りつけてそれを読んだ後自ら処分させていました。
かなり紙の繊維が毛羽立っていましたが、封筒からホシのものと思われる指紋が採取できました。
さらに、2人目、3人目、4人目は封筒が事務所や人づてに送られていたのに対し、1人目は家に贈られていたことから住所を知っている人物であると考えられ、周辺を調査した結果同じ音大でコンクールで彼に負けたという生徒が一人浮上。
任意で聴取をしようとした所逃亡を図り、署まで同行してもらいました。
取り調べを実施、指紋が一致し、更に楽譜を送ったと認める発言がありました。これから、ホシは彼であることが断定できます。」
「どうやって楽譜を送る事で被害者を殺害したんだ?」
上官の言葉に周りがざわつく。
やれ呪いの楽譜だの、やれ呪い殺しただの。
相変わらず想像力豊かな頭に溜息を一つつき、立ち上がる。
「報告変わります。これは決して呪いなんかではありません。
原因の楽譜と結果の心臓発作をそのまま繋げるから不思議な力が働いたのだと錯覚したのであってその間を埋めれば何の不思議なことはありません。
資料の楽譜を見てください。
未完との証言がある通り音が足りない。
プロのピアニストや天才と称された彼らは気持ちのいい音を知っている。気持ちのいい指運びを知っている。
そうして足りない音を埋めて自分が作曲していると錯覚を起こす。
実際はその楽譜の崇高な技巧。すべてこの作曲者によって操られているもの。
実際4人の演奏を聞き比べたが、全員大まかに同じリズムで同じ調で演奏をしていた。
けれど、操られているなんて知らないピアニストたちは、今までは音を奏でる媒体でしかなかった自分がいつも尊敬の念を抱いている曲を創造しているのだと勘違いをする。
まるで神になったかのように。
だから、高揚する。息があがり心臓が高鳴る。
さらに照らすライトにより汗が流れ脱水に。
鍵盤を叩くのが激しくなっていき、その振動によって手足の血管が収縮して鼓動が早くなる。
そんな中での「静寂」。
次の音を誰もが、自分でさえもが待ちわびて期待が高鳴り呼吸が止まるその瞬間。心臓発作を引き起こす。
これが原因です。
また、動機に関してもきっかけはオーディションの際自分は平凡だと酷評されたのに対して、1人目の被害者が天才であると絶賛されたのを根に持ったようで、古い古い楽器屋で見つけた誰が作ったのか分からない楽譜を腹いせ程度に送りつけたそうです。
そしてそれを弾いた被害者が亡くなったと聞いて「俺は天才が天才であると証明してやってるんだ!」と腹いせから全能感に行動理由を変化させて天才と称される彼らに送りつけたようです。
楽譜の原本はこちらで回収。本人曰くこれ以上複製はしていないとのこと。
一応本当に回収できているかどうか確認を今進めています。
そして、アップされる可能性のある動画ですが規制を掛けていますし、万が一耳コピをしたとしてもそれは自分で作曲した曲ではないのでおそらく心臓発作を起こすほどの強い高揚はないと考えられます。以上。」
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