石の壁の家

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 まず、私の名前と職業からお伝えするべきでしょう。私の懺悔に深く関わることですので。  私の名前は黒田(けい)、三十二歳。地方検事局で仕事をしています。  二年前、ある事件の担当検事になりました。  凶悪犯罪です。三人の少年少女が誘拐されて、二人が殺された。  犯人は白神楓(しらかみかえで)。そう、あの数年前の凄惨な殺人事件、そしてその犯人です。  ええ。神父様もこの事件のあらましについてはご存知でしょう。  おそらく、神父様と言えどあまり聞きたくない話が多いと、そう思います。  お許しください。この事件の詳細、そして犯人については、全て私の懺悔に関係があることです。  発見された時、三人は犯人のアジトで、鎖に縛られ、裸で天井から吊るされていました。そのうち二人は、犯人により腹を切り裂かれ、内臓を取り出されて絶命していた。  一人は処置をされておらず、鎖痕以外の目立った外傷もなく、身体的には無事でした。ですが現場での恐ろしい体験のために精神耗弱状態に陥っていた。  そして、白神は現場で確保されました。逃げようともしていなかったのです。  罪状は明らかで、また白神も隠すところなく自供しました。  そして刑事裁判のため、私が彼の供述調書を作ることになりました。
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