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ボクは、物心ついたときにはそこにいた。
石の壁の家、そう呼ばれていた。
本物の石じゃなかったんじゃないかと思う。コンクリートだったかもしれない。
雪が積もった林の中、罅がいくつもいくつも入った灰色の壁の洋館、そんな家にボクたちは住んでいた。
周りは高い塀に囲まれて、鉄格子の門にはいつも鍵がかかっていた。
白樺の家、なんて名前だったらしい、元々は。でも、そう呼ぶ人はいなかった。
この名前で分かる? 元々は福祉施設だった。孤児院だったらしい。ボクがいたときも、一応孤児院ということにはなっていた。
だけど、普通の孤児院じゃなかった。子供たちはどこからともなく運ばれてきて、石の壁の家に置いていかれる。中には職員はいない。
灰色の作業服を来た人が、時々トラックで段ボール箱を置いていく。中には食料が入っている。
だけど、中の子供全員に行き渡るには足りなかったんだ。そして、それが全ての問題の根本だった。
「黒田さんは分かる? ボクらが、どうやって生きていたのか」
白神はそう、私に尋ねます。私はただ、絶句していました。
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