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ヨウヘイは念のため光線銃を持つとパトロール艇を宇宙船の船底につけてワイヤーで固定した。
「でかい船だな……」
遠目からでもその大きさはわかっていたのだが、こうして近くまでくるとその巨大な迫力に目がくらむ。
船体の前部と後部がまるで見えない。
おそらく全長1㎞はあるのではないか。
このクラスの宇宙船ともなると、その出所は限られてくる。
限られた人間しか乗れない豪華客船か移民用の船だろう。
しかしそういった船が出航したという話は、ヨウヘイの記憶の中にはない。
毎日、どこのコロニーでどんな船が出航するかを確認しているのだ。
これほどの規模だと、まず間違いなく記憶に残るはずである。
船底から見える船の名称は見知らぬものだった。
ますます謎が深まる。
もしや密入国船か。
はたまた海賊船か。
ヨウヘイはゴクリと喉を鳴らし、船底にとりつくと外側のハッチを開けた。
空気の漏れ出る音とともに、内部のハッチが閉じる。
どうやら電源は働いてるらしい。
気密センサーが作動しているのが何よりの証拠だ。
ヨウヘイは中に入り、外側ハッチを閉じると気密室の中に空気がいっぱいになるまで待った。
その間に船体の中をX線でスキャンする。
範囲は狭いが、人間や動物がいればなんらかの反応を示すはずだ。
だが、船内には何もいないようだった。
少なくとも、周囲数十メートルの範囲には人はおろかネズミ一匹いない。
そうこうするうちに気密室に空気がたまり、ヨウヘイはようやく宇宙服のヘルメットを脱いだ。
不測の事態に備え、ヘルメットはすぐにかぶれるように肩から背中にかけておく。
そうしていよいよ内部ハッチに手をかけた。
動体センサーに反応がなかったとはいえ、ここは宇宙だ。
何が起きるかわからない。
ヨウヘイは光線銃のグリップを握りしめ、ハッチを開けた。
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