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しばらく進むと、居住区のような場所に出た。
枯れ果てた大きな木を中心に、いくつものドアが円形に並んでいる。
木の側にはベンチがあり、語らいの場が設けられていた。
しかし辺りはしんと静まり返り、人っ子一人いなかった。
ドアも完全にロックされており、外からは開けられないようになっている。
誰かが来たことで、慌てて中に逃げ込んだのか。
はたまた、不慮の事故で出られなくなったのか。
出られなくなったのだとしたら……。
ヨウヘイは一つの可能性を想像して身震いした。
木の枯れ具合からして、この船はそうとう古い。
中に人がいたとしたら、もう生きてはいないだろう。
場合によっては白骨化してるかもしれない。
ヨウヘイはロックを解除してまで開ける気はなく、コクピットを目指すことにした。
少なくとも、そこから通信が入ったのだ。誰かがいるはずである。
侵入した場所とコクピットの位置を計算し、ヨウヘイは歩を進めた。
居住区をすぎると、今度は真っ暗な空間に出た。どうやら照明が落ちているようだ。
すぐさま宇宙服の両肩についたライトを点けて辺りを照らす。
暗くて不気味な通路がずっと続いていた。
手元の360度方位計を見ながら、ヨウヘイはコクピットを目指した。
侵入した場所から考えてそう遠くはないはずである。
案の定、10分も経たずにコクピットにたどり着いた。
巨大な船と同じように巨大な扉が目の前を塞いでいる。
この扉もまた居住区の扉と同じくロック状態になっていたが、ヨウヘイは腰からケーブルを引っ張り出し、センサーに差し込むと解除を試みた。
扉がロックされるという事故は比較的少ないが、こういう時のために全警備隊員に配備されているオートロック解除の機械である。
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