宇宙に漂う一隻の船~乗員乗客消失ミステリー~

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 ロックの解除は思った以上に時間がかかった。  厳重にいくつものロックがかけられているのか、はたまた別の要因か。  何はともあれ、無事に扉のロックが解除されるまで優に5分はかかってしまった。  宇宙警備が誇る最新鋭の機械をもってしてもである。  やはりこの船は何かある。  ヨウヘイは光線銃のグリップを再び握りしめ、コクピットの扉を開けた。  ゴウン、という大きな音とともに縦横3メートル以上ある大きな扉が斜めに開いていった。  そこでヨウヘイが目にしたものは……。  何の変哲もない巨大宇宙船のコクピットだった。  指揮を執る船長席を中心に、半円に座席が並び、それぞれの場所にモニターが設置されている。  おそらくはそれぞれの場所に人が座っていたのだろう、色あせた蓋つきのコーヒーカップがところどころ置かれている。  しかし、肝心の人間は誰もいなかった。  つい先刻、ヨウヘイはこの場所から通信を受け取ったはずなのに、である。  誰もいない。  通信装置に目を向けると、そこには受信した痕跡がはっきりと示されていた。
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