宇宙に漂う一隻の船~乗員乗客消失ミステリー~

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 船の航海記録を表示すると、不思議なことにこの船は2534年のまま動いていなかった。  たとえ500年間さ迷っていたとしても、そのルートや距離、時間が加算されていくはずである。  だがこの船は2534年のまま、同じ場所、同じルート、同じ距離しか表示されていない。  これはどういうことだ。  ヨウヘイは眉を寄せた。  と、その時。  通信装置の電源が入った。  別の誰かがこの船に通信を入れている。  すぐに通信席に向かい、耳を傾けた。 『こちらXY4411宇宙警備パトロール。救難信号を発してるが、なにか異常事態か?』  その言葉にヨウヘイは耳を疑った。  XY4411宇宙警備パトロール。それはまさに自分のことだ。  自分がここにいるにも関わらず、船外から自分が通信を送っている。  発せられている声も、自分の声に似ている気がした。 『こちらXY4411宇宙警備パトロール。救難信号を発してるが、なにか異常事態か?』  通信はなおも返答を求めている。  ここにいたって、ヨウヘイは自分の置かれている状況を察した。  間違いない。  この船は、同じ時間軸をループしている。  つまり、一定の時間帯を繰り返しているのだ。  原因はわからないが、おそらくタイムトラベルの実験でイレギュラーが発生したのだろう。  一定の同じ時間を繰り返すというタイムループに巻き込まれてしまったのだ。  ということは、自身もまたそのループされた時間の中に引きずり込まれてしまったということか。
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