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ヴァンが唇をわななかせながら、自分の名を呼んだ。
その反応は嬉しかった、人のためを思うことができるヴァンらしい。
「お前、一人で何かっこつけてんだよ? 一緒にやるって言っただろ?」
ヴァンが二の句を継いだ。
「クレイグ巡査、私は巡査部長です。階級の違いを弁えてください」
ありがとう、ヴァン。そう礼を述べたい気持ちを抑え込み言い放った。
「ファインズ巡査部長」
クルーガー管理官が自分を見やった。
「あなたは警視庁刑事部経済犯罪対策課二係の捜査員です。ブラスポート署刑事課に所属しているクレイグ巡査に対する指揮命令権はありません」
当然の返答だった。
「おっしゃる通りです。ですが非公式とはいえ二人で捜査していた以上、上位階級である私が指揮命令をしていたことは事実です」
「何を言いたいのですか?」
「本件における全ての責任は上位階級であり指揮命令を下していた私にあります。ですので、クレイグ巡査の自宅待機処分を取り消して、彼に特捜本部の捜査を続行させていただけませんか?」
管理官は何も言わなかった。
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