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だからこそ、自分は彼の友情に報いたい、そう思って協力した。なのに、また同じことの繰り返しになっている。トーマは自分のために一人で責任を被ったのだ。
「なんで、なんであんなこと言ったんだよ?」
彼の後ろに突っ立ったまま、同じことをまた聞いた。
トーマは余裕のある笑みを浮かべると、こちらに向き直って洗面台に軽く尻を乗せた。逡巡するかのように沈黙を守っている。
「どうして、俺のことなんか庇ったんだよ?」
三度目の問いかけをすると、トーマがふうと息を吐きだした。
「今回のことはそもそも俺が言いだしたことだ。結果的にはお前のことを巻き込んじまったけど、お前までむやみに責任を負う必要はない。そう思っただけだよ」
弱々しい笑顔だった。
「でも」
切ない思いで一言だけ返した。
「それに、もしここで俺とお前の二人が外されたら、誰が食品流通事情研究会やヴェイラー、それにスキナーを追いかけるんだ?」
不意に真剣な表情をしたトーマがそう語り掛けてきた。
「いいか、ヴァン」
トーマの表情が一層真剣さを帯びた。
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