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「今回の件で、特捜本部はスキナー本人や関連がある団体には捜査の手を伸ばさないはずだ」  薄々感じていたことをトーマが言葉にした。 「俺は今でも自分の推理が間違っているとは思ってない。だが、管理官の言う通り容疑を掛ける根拠がない」 「警察にとって現役、しかも与党の幹事長であるスキナーを捜査するってことは大変な事なんだ。無論、容疑を固められて逮捕起訴できれば大金星だ。でも、もしできなかったら」 「誰かが、責任を?」  トーマがこくりと(うなず)いた。 「ああ。当然、誰もそんな危険を冒したくない。しかも、都合のいい事に八人の女達とユエンとダリルっていう獲物自体はもうはっきりしているわけだからな。要は事件の全容を明らかにしなくたって犯行に及んだ被疑者を確保できれば警察は批難を逃れられる」  言いようのない怒りがこみ上げた。安全なところにいる黒幕が逃げおおせようとしていること、それがどうしようもなく汚く感じられる。 「でも、俺一人じゃ」  憤りとは裏腹に自分ができることの少なさや無力さに打ちひしがれた。
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