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「もちろん無理する必要はない。けど、考えてみろ。もし俺の推理通りユエンとダリルが株価操作のために毒入りヨーグルトをばら撒いたのだとするなら、指示を出した人間が必ずどこかにいるはずだ。そしてその指示を出した記録が奴らの生活圏内に残っている可能性はゼロじゃない」
それを聞いてはっとした。
「俺は被疑者に暴行を働いた、これはもうどうしようもない。監察官聴取も査問委員会処分も受けるしかないんだ。でも、お前は」
確かにそうだ、自分は命令違反を働いたが、大きな処分を受けなければならないほどのことはしていない。そう考えれば、自分が特捜本部に残ってトーマの推理の裏付けをすることは合理的なように思えた。
それでも一緒にやっていたはずの自分の処分だけが軽く、むしろ大きな仕事をしているはずのトーマに厳しい処分が下ることは納得がいくものではなかった。
「不本意かもしれない。でも、お前は特捜本部に残ってくれ、頼む」
真剣なだけではない、執念を感じさせる言葉だった。
「分かった」
ぐっと奥歯を噛み締めてからそう答えた。
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