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普段ならロイに促されれば口を開くだろう。だが、今回だけは違った、トーマへの協力、それはある意味で男同士の対等な関係によるものだった。たとえロイであってもそこに介入されたくはない。ここでトーマの過去を勝手に話すことは、上手く言えないが彼への裏切りのように思えてならなかった。
「ノックス警部補、シーウェル警部補、あなた方は彼の行動の理由を聞いていますか?」
困り果てたようにフィスク課長が二人に話を振った。だが、続くのは沈黙だけだ、きっと首を横に振ったのだろう。
「クレイグ巡査、ファインズ巡査部長は教場のときのあなたの同期生よね?」
「はい」
ぼそりと答えた。
「ファインズ巡査部長はあなたが配属されてきた日に起きたデクスター事件のとき、被疑者デクスター・ヤングを射殺した。あなたが被疑者に刺されるかもしれないと思って。そうよね?」
「はい」
一つ返事をする度に、何かを一枚ずつ剥がされていくような気分だった。
「あなたは彼に友情、それに負い目を感じていた。だから、彼に協力した。そういうこと?」
「はい」
確かにそうだった。だが、それだけではない。
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