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ブラスポート署強行犯係の島には全員が勢揃いしていた。とぼとぼと歩いている自分を誰もが訝しむように見つめている。
そのまま、自分のデスクに戻って腰を下ろした。カイルも、シェリルも、ムーアもエリーも皆がただ自分をちらちら見やっているだけだ。
「ヴァン」
次に自分を呼んだのはノックス班長だった。
「はい」
答えて彼のデスクに歩み寄った。
「なんで何も言わないんだ?」
座ったままのノックス班長が自分を見上げた。ぼんやりしたその細面は普段以上やつれて見える。
なぜ何も言わないか、それは言えないからだ。言わないのではない、言えないし、言うことは何かを捨てるような痛みを自分にもたらすからだ。
「お前が事情を話してくれないと、こちらとしてもお前を庇えない。俺たちだってお前が処分されることを望んでるわけじゃないんだ」
班長は優しく自分を諭してくれた。もう観念して言うべきかもしれない、そんな心の隙間を縫うような言葉だった。
――おい。
黙ったままの自分に向かって苛立ったような声が飛んだ。カイルだ。
――お前、いい加減にしとけよ。
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