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阿部さんは今日も決して野心を見せることのない草食動物みたいな雰囲気を醸し出している。そういえば見た目だってどこかリャマに似ている気がする。
私があまりにもじっと阿部さんを見ていたせいか、多田くんが「ん?」という表情を見せた。
無表情を装って、私はデスクトップに顔を向ける。
私がこんなにも阿部さんに注目するのは、なにも男としての魅力を感じているからでもなければ、阿部さんが二十代後半、独身で次男だからということでも決してない。
阿部さんは誰にも害を与えない、空気のような存在だ。
でもそんな阿部さんの後ろ暗いヒミツを、ひょんなことから握ってしまったことにある。
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