それぞれの岐路

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 割と成績のよかった長男は関東の大学へ進むことが決まり、いち早く家を出た。向こうでの生活に順応し、大学生活を楽しんでいるようだ。  長男は昔から自己管理が下手なところがあり、服を脱いだら脱ぎっぱなし、物を出したら出しっぱなしで、それでよく妻から小言を言われていた。  きっと今住んでいるアパートも大変なことになっているのは、容易に想像できた。でもそれも勉強。親のありがたみを、ひしひしと感じていることだろう。  その点、次男はきっちりとしていた。成績はそこそこだが、掃除や挨拶は誰よりも率先して行っていた。  部活で使った物は自分で洗い、言われたらすぐに行動。兄弟でもこんなに違うものかと、2人でよく話した。  大学受験には1度失敗したものの、くじけることなくコツコツと勉強に励み、今年無事合格。晴れて大学生活をスタートさせた。  そして、戻った。2人きりの生活に。  20代の頃は2人きりの生活に憧れていた。愛する人と寝食をともにすることが新鮮で、毎日一緒にいられることが、この上ない幸せだった。  その頃は僕には、彼女が全てだった。
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