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それぞれの岐路
「じゃ、行ってきます」
息子はそう言って、重たいスポーツバックを肩にからって新幹線に乗り込んだ。
シューっという乾いた音と共に、扉は閉まった。そして、私たちと彼との間を遮断した。
息子はこちらを見向きもせず、自分の座席へと向かっていた。妻はその姿を追いかけ、窓越しに彼の姿を見守った。
スポーツバックを荷台に上げ、彼は自分の席に腰を下ろした。そして窓の外にいる妻に軽く手を上げた。
妻もその姿を確認すると、右手を小さく降った。彼女の手が下りるのを確認するかのように、新幹線はゆっくりと、次の目的地に向かって発車した。
彼は行ってしまった。
残された妻と私は、しばらく新幹線の行く末を見守った。
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