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2.
次の日も晴れた。ミニブタは、昨日客の誰かの質問に答えた通り、この日もウサギ町で、ゆで卵を乗せたリヤカーを引いていた。
「ゆでたまご~。おいしいおいしい、ドラゴンのゆで卵はいらんかね~」
本屋の前に来た時だ。
「ちょっと、ゆで卵屋さん!」
ミニブタを呼び止めたのは、昨日の茶色いウサギだった。ずいぶん慌てているようである。
「あ。昨日、大きい卵を買ってくれたお客さんですよね。どうしました?」
「あの卵から…、あの卵から…」
「あの卵から?」
「ドラゴンが孵化した!」
ウサギはひどく慌てた様子で訴えた。しかし、ミニブタは全く動じずに答えた。
「ああ、な~んだ。すいませんねえ、たまにそういうこともあるんですよ。メスだけで育ててるはずなんだけど、ドラゴンは性別を見分けるのが難しいから」
「茹でてあるんじゃなかったのか?!」
ミニブタは、顎に手を当てながら言った。
「100度程度のお湯じゃ、茹らなかったってことかな」
「そ、そんなことってあるのか…?」
「ドラゴンは不思議な生き物だってことを、現代人はすっかり忘れちゃってるんだよね」
ミニブタはぴしゃりと言った。
「ボク達のご先祖の代から、長い時間をかけて家畜として飼い馴らして、品種改良も重ねてきたけど、たまにちょっと変わった個体が出てくることもある。ドラゴンの遺伝子は複雑なんだ」
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