繋がる落書き

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 ラクダを描き終えたわたしは、いつもよりも少し早目にトイレを出て無駄に他の教室を遠目から覗いた。うちのクラスの人なのか、それとも全く別のクラスの生徒なのかわからない。  誰があの絵を描いたのだろう。  もしかしたら、その人と友だちになれるかもしれない。  そんなワクワクがわたしの中にあって、自分の教室へ戻り席へついてからもニヤニヤが止まらなかった。  机に突っ伏しながら、顔が綻ぶのを感じた。    それから毎日のようにわたしたちは絵描きしりとりを続けた。たくさん絵を描くと目立ってしまうから、ご丁寧に前回の絵は消しゴムで消して。  猫、コアラ、ラクダ、ダンゴ虫、シマウマ、マラカス。 「ス」で終わっている。動物とか簡単なものにしようと思ったが、もう少しだけ距離を縮めたいと思ったわたしは、「須藤先生」の似顔絵を描いた。  須藤先生は国語を担当しているベテラン男性教師だ。特徴的な顔をしていて、鼻の横に大きなほくろがある。  蓄膿症らしく、授業中いつも鼻をふがふがさせている。  その須藤先生の似顔絵だ。  伝わらなければ終わる、と思ったが、翌日描かれた返事には、「似てる笑」という言葉が添えられていた。
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