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そんな二人を二柱が眺めていた。
一柱は二人のいるこの常城神社の主神。もう一柱は主神にとっては最近沸いた賢しらな羽虫だと思われている者だが、主神は面白そうだからと何くれとそれに色々、このあたりのことを教えていた。その柱も細かいことを気にするタイプでもなかった。そして主神は、その羽虫が二人を見てよからぬことを考えている、と何となく感じ取っていた。主神は腕を組み、ニヤニヤと面白そうにそれを見つめる。
「おいクピド。何をするつもりだよ」
「あすこにすれ違う二人が御座いますれば、引き寄せてしんぜようかと」
その声に主神は外を眺めた。その二人の片方からはその差配する医薬の気を感じ、片方からは同じく草木の香を感じた。そしてクピドと呼ばれた方も、その二人から差配する愛の気配を感じ取っていた。
けれどもクピドがこの国に現れたのは極最近であり、この国の人間の機微というものが未だよくわからなかった。レディファストの国から訪れたクピドには、仏頂面の広道がその内心を隠して凛を嫌っているような態度を取っているようにしか見えなかったのだ。クピトは自らの役目を恋の仲立ちと自認している。
「あの御仁の様子では、嫌っているようにも見えましょう」
けれども日の本の存在である主神は、なんとなく日本人の感性として、二人が過不足なく好き合っているのだろうなと感じていた。
「ふうん、それでお前はどうするつもりなのだ」
「取りいだしたるこのクピドの弓にて射ますれば、たちまち目の前の相手に思いを寄せまして御座候」
そしてクピドはその背から小さな弓矢を取り出し、構えた。瞬く間に狙いすまして矢を放ち、けれどもその瞬間、凛がよろけたのだ。主神がこっそり強い風をふかせたのだとは、クピトは気づかなかった。
「あっ狙いが」
「どうするつもりだい?」
「……仕方が御座いません。私めが顛末を然と確認して参りましょう」
何より、ニ柱とも、極めて悪戯好きだったのが運の尽きだ。
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