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物心ついた頃から、私は音の無い世界で生きてきた。それは、降り積もる雪が人としての生活を奪っていったからだ。
予報にもない突然の大雪に見舞われた日本は、たった一晩で半数以上の人口が失われた。それは日にちをずらして、世界各地でも同様の現象が起こったといわれている。
始めは何が起こったのか誰にもわからず、人々はパニックに陥った。実態が解明される頃には、さらに多くの人間が命を落としていたらしい。
有害な何かを含む雪が世界中に降り注いだのかと思われたのだが、実際には雪に混じって死が舞い降りてきていたのだ。
世界から集められた研究者たちは、それを『音の無い怪物である』と結論付ける。
通常では雪と判別がつかない真っ白な生命体は、雪と共に地上へと降り注ぐ。
それに捕まった人間は、ひとつの例外もなく心臓麻痺を起こして死亡してしまうのだ。その仕組みについては、未だに解明されていない。
ただ、その怪物は音に反応することがわかっている。窓やドアを破ってこそこないものの、僅かな隙間さえあればどこにでも入り込んでくるのだ。
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