子猫と先輩

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子猫の鳴き声。 遠くにカラスの声。 私(女子)ナレーション 「卒業式が近くなって、校内が何だか浮わついている。先輩たちがいなくなることが寂しくて、告る子も多い。自分が受験生になることも、ナーバスになる理由の一つ。誰だってよりどころは欲しい。私だって、先輩と離れないでいられるならそうしたい。でも、まだまだビミョーな距離感が告る決意を鈍らせてしまう」 そこに、 ザッ、ザッと砂を踏む音。 先輩(男) 「ここにいたのか。探したぞ。ん、猫? 居ついちゃったのか?」 私 「あ、うん。兄弟もいたんですけど、この子ひとりになっちゃって。私が飼えたらいいんですけど、うちペット禁止なので…」 猫の鳴き声。 先輩 「飼えないなら、ヘタな情をかけちゃダメだろ。生きていけるはずのものが生きていけなくなる」 私 「そう…ですよね。それよく言われてることですし」 猫の鳴き声。 先輩 「まあいいけど、それはそうと、早く部室行かないと、セレモニー始まるぞ。お前は部長なんだから、ちゃんと俺たちを見送ってくれないと」 私 「あ、はい。今すぐ行きます」 先輩 「てゆーか、まだお前から聞いてないんだが。俺の合格祝い。第一志望に受かったんだから祝ってくれよ」 私(ナレーション) 「先輩の第一志望は、地元から遠い距離。もう、なかなか会えなくなる。だから私は祝ってあげられなかった…」 猫の鳴き声。 私 「住むとこ、決めたんですか?」 先輩 「ああ、昨日契約して、10日後から住める。築20年のオンボロアパートだけどな」 私 「家賃も安そうですね」 先輩 「いや、こことは物価が違うから、お前が思うより家賃高いよ。バイトも忙しくなりそうだ」 私 「…じゃあ、こっちに帰ってこれませんね」 先輩 「なかなか難しいだろうなー」 猫の鳴き声。 先輩 「でも、悪いことじゃないから。未来のためにも、今のためにも」 私 「?」 先輩 「古いから、ペット可物件なんだ。その猫、俺が飼ってもいいよ」 私 「ホントですか!?」 先輩 「そのかわり、共同飼い主になってくれ。どうみてもそいつ、お前になついてるだろ。毎週じゃなくたって、顔を見に来てくれよ」 猫の鳴き声。 きゅーん!て感じのきらきら音。 私 「先輩の部屋に入り浸りますよ私」 先輩 「猫2匹飼う気持ちで」 私 「先輩が思ってるより、なついてますよ私」 先輩 「じゃあまずは、帰りにその猫連れて帰るか。野良と思ってても野良じゃないケースもあるし、前段階は踏まないと」 私 「手伝います私」 先輩 「そうしてくれたら助かる。俺にも前段階あるから。色々とな」 私 「はい!」 猫の鳴き声。 私(ナレーション) 「そして私たちは、単なる元部長と現部長ではなく、恋人同士になったのだった。猫が結んでくれた赤い糸。私たちはきっと大丈夫。未来も、ずっと…」 放課後チャイムからの、 主題歌フェードイン! おしまい
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