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「新人さんですか?」 「はい、今年の新入社員の野村(のむら)です。研修が終わって配属されたのでご挨拶を」 「野村 沙英(さえ)です。どうぞよろしくお願いいたします」  指導係である本庄(ほんじょう) 広美(ひろみ)の紹介に続き、沙英は課室を訪れた取引先の社員に頭を下げた。 「MSエージェンシーの今野(こんの) 宗史(そうじ)です。僕もこちらには去年の秋からお世話になり始めたばかりなんですよ。今後とも精一杯努めますのでよろしくお願いします」  社内はともかく、沙英の配属先は課長も含め女性が多い。男性は二十代半ばと四十代、定年後再雇用の嘱託社員が一人ずつの三名のみだ。  今野はおそらく三十代だろうか、長身でスーツや髪形もすっきりと爽やかな男前。普段あまり見慣れない、颯爽としたビジネスマンの姿に目を奪われた。 「素敵な方ですねぇ」  彼が帰った後、溜息交じりで告げた沙英を、広美が鼻で笑う。 「まあ、ね。ぱっと見は悪くないかも。でも野村さん、大事なのは中身だから。ああいう薄っぺらい男の見た目だけに騙されないように、気を付けた方がいいわよ」 「……はぁ」  気丈な広美には、優しげな彼の良さはわからないのかもしれない。  疑問に感じつつも、指導役の先輩に抗うつもりもなく曖昧に返した。
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