嫁入り娘

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☆男女関係についてかなり特殊な世界観描写があります。一般的ではないかと思います。どうぞご注意ください☆  山間に点在する村々の行き来は、深い森と険しい峠に阻まれ多くはなかった。  とはいえ、それぞれはとても小さな集落だ。  時折、新たな血が必要になる。  うちの村とその村とは、十数年に一度、互いに若い男女を婿嫁に出し合う取り決めになっていた。  山を越え、使いの者がやってきた。  ささやかながらも、精一杯の酒や肴でもてなす。  使いは、口数は少ないけれども、人の好い笑みを絶やさない穏やかな中年の男だった。  感じの良いひとだ、きっと良い村なのだろう。  宴の席でおかずや酒を運びながら、わたしはそう思った。  そう、その村へと嫁ぐのは「わたし」。  それは内々、すでに取り決められていた。  どうやら、使いの男も、ちゃんとそれを知っていたのだろう。  男も、わたしのことを気に入ったようだった。  使いの男が帰ってほどなく、「嫁取りを、つつがなく執り行いたい」と。  あらたまった言葉をしたためた、村長(むらおさ)同士の書き物がとり交わされた。 *
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