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「そのやるべきこととは?」
「……ある者を探しております」
「それは奇遇だな。俺も人を探して、この地方までやってきた。バンド編成に不可欠な最高の歌い手を見つけるために。この世のものとは思えない美声の持ち主がこの近くに棲んでいると噂で聞いてな」
「それはもしや……この地方に伝わる『静かの森の魔女』のことですか」
「そう、その伝説の魔女」
「それならやめておいたほうがよいです。東方の寺院に『蛇巫女』という森を守る巫女の古文書がありました。一度、蛇巫女の歌声を聴いた者は生きて帰ることはできないという伝承があります。その巫女はレプティアかもしれない。私は寺院からその伝承の真相を探る依頼を受けました。邪味線が魔除けの役割を果たしてくれますが、とても危険な役務です」
「危険だろうがなんだろうが関係ないさ、俺が欲しいのは究極の歌姫。 ……居場所はもうわかっているのか?」
「この邪味線はレプティアの皮革が張られた聖楽器です。これが触媒となって、その居場所を示してくれるはずです」
「しかし妙だな、レプティアは音に敏感だが声は出ないはず。その魔女は本当にレプティアなのだろうか?」
「その正体を明らかにするために『静かの森』に赴こうと思っています」
「それなら俺も用心棒として連れていってくれないか? こう見えても元々傭兵騎士団の指揮官だ、レプティアの撃退法も知っている」
「対魔武具はお持ちなのですか?」
「このエレギタラがまさにその対魔武具だ」
「強引ですね、仕方ありません……これも何かの因縁かもしれないので、ご一緒しますか」
「よし、そうと決まれば、さっそく向かうとするか。『静かの森』へと」
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