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レプティアは牙を剥き出しにしながら、俺のほうへ向かってきた。
その瞬間、邪味線の甲高い音が鳴り響いた。レプティアは頭を大きく振り上げ、ジョンのほうに顔を向けた。
「私の邪味線でレプティアの気を引きつけておきます。今のうちに逃げてください!」
俺はもう一度少女のほうを確認すると、倒れている彼女の姿があった。
「いや……ジョン、悪いがそのままレプティアを引きつけておいてくれ。俺は彼女を助けにいく」
「待ってください、そんなに持ちませんよ」
ジョンが後ずさるのに合わせて、俺は少女のほうへ走り出した。
「お嬢さん、聞こえるか? さあ、俺の手を取って」手を差し伸べるが、彼女は手を取ろうとしない。
「ええい」
強引に彼女を抱え込むとレプティアの胴の合間を縫って、少し離れた場所で下ろした。少女は厳しい表情に変わると、俺に怒鳴りつけた。
「あなた達は何をしているの。レプティアをこのまま放置すれば、大変なことになるわよ」
「君の名前は?」
「え? ……フリーディア」
「よしフリーディア、可愛い名前だ。大丈夫、このエレギタラなら倒すことができる。それには少し時間稼ぎをする必要があるんだがなあ、あいつを大人しくしておく方法はないのか?」
フリーディアは怪訝な顔を見せたが、ぼそりと言葉を呟いた。
「……私の歌でレプティアに催眠効果を及ぼすことができる」
「そうか! それじゃあフリーディア、俺と一緒にライブをしよう。俺の演奏に合わせて歌ってくれないか?」
俺はすぐにエレギタラを構え、弦を弾き始めると、呆気に取られていた彼女だが観念したのか、すぐに立ち上がると息を思い切り吸って、詩を吐き出した。
——この世界はぶち壊れている
——地獄の悪魔が私に叫ぶ
——終焉の鎖が今解き放たれる
即興なのか、古い叙事詩なのかわからないが、俺のリズムに合わせて斬新な歌詞を歌い始めた。俺達三人の三重奏の音色が樹海の静けさを切り裂く。
レプティアはジョンの目前まで迫っていたが、その音を感じ取るとピタリと動きを止めた。
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