ミントな君

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 港公園には、昔から人間の食べ物を狙うトンビがいるが、数か月振りに来てみると、また更に図々しさを増しているんじゃないかと思うほど、ずっと頭上を旋回している。 「もう、トンビもあんまり良く見えないや」  木陰でアップルソーダを飲みながら美沙が言う。 「気にしなくていいぞ。奴らが来たら追い払ってやる」 「タケちゃんは、優しいね。優しいだけじゃないよ。すごいんだよ」 「別に、俺はそんなんじゃない」 「すごいんだって。あのね、タケちゃんはミントみたいだって私言ったっけ?」 「初めて聞いたけど、なんでミント?」 「聞かなかったことにして」 「何だそれ」 「膝枕して」 「普通は、俺が頼む方じゃなくて?」 「はい、これ残りあげるね」  三分の一ほど入ったミント入りアップルソーダが渡される。美沙が、俺に似ていると言っていたミントが、氷の溶けた水溶液に浮いている……あ、浮いてるところが似てるのか。  一気に飲み干すと、何とも言えない平和な空気に包まれた。きっと美沙と付き合っていなくても、一人でここへ来られた。でも、こんな気持ちには、なれなかった。
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